受術20数時間後に無事しがらみ(チューブ類)から解き放たれた喜びの次に待っていたのは、人類進化過程を身をもって感じる奇跡的な日々でした。というのは大げさですが。

スタート地点は、生きていく中で何の苦労もなく行ってきたこと「まっすぐ立つ」「思い通りの速度で歩く」「咳・くしゃみ」「排便」「大声で笑う」が出来ない!あるいは相当の苦労を要する!という状況。原人になる以前の問題です。動物としてヤバいです。

動物としてヤバかった私は先ず咳とくしゃみに困りました。思わず出てしまうと、エイリアンの子が腹破って生まれたかと思うほどの激痛。なのでとにかく勢いよく咳しないよう、くしゃみをしないよう、うまく逃す術を覚えました。くしゃみがでそうになったら鼻をつまんで左右に振って逃がす。咳が出そうになったら。これはひたすらこらえる。とにかく腹に力をいれずに済むよう努力しました。どうしても出てしまうときは、普通なら口を覆う咳ですが傷口を両手でぐぐっと圧迫して咳をすれば痛みはかなり軽減できます。

排便は、看護師さんに教わったテクニックをフル活用してこなしました。名付けて”綺麗に言えばデトックス戦法”。これは、ウォシュレットのおしり洗いの機能をつかって簡易浣腸的に排便を助けるやり方です。水の勢いを少し強くして、しゃーっと出した水を肛門様に当てます。肛門様は印籠を出す時の厳しいお顔でなく、ご隠居さまと呼ばれている時の穏やか〜なお顔でいていただくわけです。そうすると肛門様からお水が腸に入って便に水分を与え柔らかくしてくれるため、うまくいけば半下痢状態でするっとご出陣。コツを覚えてしまえば簡単ですので是非お試しあれ。

そんなこんなで四つんばいから2本足歩行にはなれます。でもまだ猿と原人の間位かな?

すぱっと切った傷口は、内側にすこし折りたたんで縫われています。のりしろみたいな感じです。そのため皮と肉はちょっとつっぱた状態のまま。常に攣っているわけです。歩く時すっと背筋を伸ばすには微妙に皮が足りない。ゆえについついお婆ちゃんのように前かがみな姿勢になってしまいます。術後すぐはお腹をかばうせいもあって相当の前かがみ度です。痛みこそありませんが一歩一歩をそろっと踏みしめる。歩行速度も例えるなら、懐中電灯ひとつで心霊スポットにこわごわ踏み入れる時の速度です。捕食動物が襲ってきても絶対逃げられません!助けて!!

閑話休題。

人間は「笑う」という喜怒哀楽で言ったら「喜」?「楽」?どっちでもいいですが、この高度な感情とその表現があるからこそのホモサピエンスだと聞いたことがあります。ところがどっこい、腹の傷はその高度な感情表現に支障をきたす憎いあんちくしょう。不意に襲ってくる爆笑事件は腹切りガールズには爆弾以外の何物でもありませんでした。

爆弾劇場


待ちかねた配給やっと昼食!みんないそいそと談話室(動ける人はそこでしゃべりながら食べてた)へ移動。
※食事は、前の週に翌週分のメニューが配られます。みんなその中から好みのメニューを選んで申告しますが、何しろ申告してから時間が経っているため今日は何かなワクワク!状態。


動ける組は自分でトレイをもらい、車椅子だったり動けない組は職員さんが持ってきてくれます。テーブルを囲むいつもの面子はMちゃん、M姉さん、S姉さんと私。そして大腿骨の骨折で入院中だけど外科病棟に空きベッドがないため婦人科病棟入院中のOさん。

Mちゃん「やったー私今日肉だよ」
私「私もだ!ラッキー」
M姉「いいなーカロリー制限ない人は」
S姉「あれ、Oさんのは?」
Oさん「今持って来てくれるわ、ほら来た」
S姉「Oさんは何かな、お魚かな?」
Oさん「この蓋取りにくいのよ、くっついちゃって」
私「取りましょうか?」

じゃじゃん!メインディッシュオープン!!

キャベツ!そしてポテトサラダ!

中央に大きく空いたスペース!!!

???

S姉「ルパンだ、ルパンが出たぞー」

爆弾投下、そして大爆発。腹切り組傷口を全力で押さえ爆笑。

S姉「ルパンを追えー!!」

Oさんのメインのおかずは入れ忘れられておりましたとさ。
お願いですからおかずはちゃんとお皿に乗せておいてください。

えーと。
とにかく、笑うという行為は本当に苦痛を伴うのです。腹を押さえずに笑えるようになる日、その日こそが、知恵のある人”ホモサピエンス”への進化を遂げる日、だと思うのです。そして、その日にむけて進化(回復とも言う)していく過程を日々目の当たりに出来ることも事実。昨日できなかったことが今日はできる!という感動は、大人になるとなかなか味わえないと思いますので、せっかくの機会を楽しんでしまいましょう。









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